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動物・環境ニュース

2020/06/09
ヨーロッパアナグマ 淘汰という名の駆除、終結
 新型コロナウィルスが問題になっている中、The Guardian紙に、「ヨーロッパアナグマの淘汰の終結」という記事がありましたので、JWCでも紹介させていただきます。

 ヨーロッパアナグマというのは、ヨーロッパ全域と西アジアの一部に分布しているネコ目イタチ科の動物で、日本に生息しているニホンアナグマと同属の動物です。森林から草原、牧場など様々な環境に適応して生息していますが、人間にも感染する重篤な感染症の原因として、駆除の対象とされてきました。

 20世期前半から家畜に感染が広まったマイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)により引き起こされる牛型結核菌。この感染症は、牛の生乳を摂取することで人間にも感染します。牛型結核病は、年間3万頭の牛の強制淘汰と175億円の諸費用が農家と共に納税者にとって大きな痛手となっていました。この牛型結核菌の伝播者として知られるようになったヨーロッパアナグマは、牧場での感染源であることから、イギリス政府は、2013年に国内2か所で駆除を始めました。現在では43か所にも拡大し、これまで処分されたのは10万頭にもおよぶそうです。

 ところが2018年、専門機関のある報告により、牛型結核菌の感染は、売買による牛の頻繁な移動や、農家による感染予防対策の不備が大きな要因になっていることが判明し、ヨーロッパアナグマを駆除するのではなく、マイコバクテリウム ボビスに対するワクチン接種を行うことが重要だと主張されました。

 今回の記事は、イギリス政府がこの報告を受けて、現在行われている駆除を数年内に廃止し、アナグマのワクチン接種に移行すると発表したというものでした。

 記事によると、イギリス政府は農場内での感染拡大を減らすために、牛の移動方法についても適切に行うように検討するとともに、農場の効果的な感染予防対策の取り組みにも専念していくそうです。
さらに結核に感染した牛の多くが、牛同士による感染経路になっていたことから、感染した牛の効果的な診断検査方法の開発と、牛用のワクチン開発も支援するとしています。

 現在の新型コロナウイルスの蔓延により、どこまで実施できるかは定かではありませんが、これで少しはヨーロッパアナグマの淘汰という名の駆除も減るのではないかと考えられます。結果的にはアナグマへのワクチン接種により、他の野生動物への感染リスクも減少することで、生産者や納税者、動物たちとその自然環境にとって、より良い未来になることを期待しています。


情報提供:折原美子
執筆  :JWCスタッフ




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